第1回 プロローグ~画像処理技術のすすめ

計装(2004年2月号)

第1回 プロローグ~画像処理技術のすすめ

現場適応型のSI(システムインテグレータ)

はじめまして、画像処理の世界ではあまり知られていないパシフィックシステムと申します。当社はシステムインテグレータとして親会社であるセメント製造会社の業務・基幹系システムの開発・運用を手がけ、そのノウハウをグループ企業や外部の客先へのソリューションとして役立てています。その1つのソリューションが画像処理システムで、特に製造ラインでの検査工程に役立てています。

今号から隔月で6回にわたり、テーマである「目視検査の自動化」に関することを、当社の体験談を交えてご紹介し、現在目視の自動化をお考えの読者に何か良い情報が提供できればと思っております。ただ、当社の画像処理は玄人というより現場適応型の色が濃いので、素人っぽい表記があるかも知れませんが、その辺はご容赦下さい。

「ひと」には敵わない

目視検査の自動化で一番の障害は、なんと言っても「人間の目の素晴らしさ」です。人の目は正確でなくとも数十ミクロンの欠陥から全体に広がるムラを見分けたり、目の前を流れるものの違いを見分けたりすることも可能です。小さい物から大きい物までカメラでいうところの分解能を自由に切り替えて検査が行えたり、目を細めたり、視点を変えたりと、色々な物の見方を自由に行うことができます。これが機械に置き換えることを難しくしています。

また、もう一つの問題として、「自由な姿勢」があります。検査物を自由な角度から眺めることが可能なので角度に依存した欠陥(上からは見えないが斜めからは見えるなどの欠陥)を見つけることができます。これも機械化には難問となります。

このように目視検査自動化の最大の障害は「人」ということです。前に挙げたようなことは一つ一つは機械に置き換えることは可能です。目はカメラに、自由な動きはロボットになど。ただこれらを自在にコントロールすることは可能であっても、現在の技術では莫大な費用が必要となるため現実的ではありません。また、最大の難関は「脳」です。人の脳は目から入ってくる情報を瞬時に判断することができます。色々な記憶(過去の検査、検査基準)との比較により判断、外乱の影響の考慮(無視)なども意識すること無く行うことが可能です。しかし、これを自動検査するためにロジック(プログラム)を組もうとすると、多分不可能でしょう。

人の弱点を補う

以上のように人がどんなに素晴らしくても、全く問題がないわけではありません。例えば、人は休みなく検査できない、個人間のばらつきがあるなど品質を管理する上では問題となる弱点があります。しかし、この人の弱点は機械(システム)にとっては非常に得意とするところです。電気があれば動き続け(当然定期的なメンテナンスは必要)、機械によるばらつきも調整によりある程度の一定化が行えます。

そこで機械の弱点である画像の入力と判断を、如何に自動的に行えるかが画像処理屋の腕の見せ所となります。

自動化への第一歩

画像処理による検査装置で失敗している方々はたくさんいると思います。当然?当社も失敗や結局生かされないシステムを作ったこともあります。失敗はつきものですので、諦めず、その失敗を原資に次を目指す気持ちが一番大事です。自動化への第一歩としてはありきたりな内容ですが、次のような情報が必要であり、この情報によりある程度システム化への予測をつけることができます。

  • 対象物
  • 対象物の状態
  • 目視検査の方法
  • 検査時間・間隔
  • 検査精度
  • 搬送方法
  • 検査対象物のサンプル(良/否/限度)
  • 予算

この情報を元に適応調査を行い、システムへの実現性とそれが導入できる物なのかを費用を加味した形で検討します。費用を加味するところが意外と重要で、見積った費用と想定していた費用があまりにかけ離れていては意味がありません。

画像処理システムの進歩

ここですこし技術寄りの話をします。近年画像処理がここまで一般化してきたのは技術の進歩によるところが大きいです。数年前まで、画像処理といったら、現場で使われている物の殆どが専用のハードウェアで動作するものでした。最近多くなったパソコンベースのものは、検査に時間がかけられる工程やオフラインの検査装置にしか使われていませんでした。しかし、ここ数年の技術進歩によりCPUの処理能力の大幅アップ、メモリ等の価格低下による大容量メモリの実現によりパソコンベースでも現場のインライン使用に耐えるようになりました。また、動作環境においても比較的開発が容易な、Windowsベースの組込型OS の登場により、より効率的により安定したシステムを開発することが可能となりました。

画像検査の最大の「目」玉であるカメラに関しても選択範囲が広がり、高解像度のエリアセンサ*1)やラインセンサ*2)の出現により、今まで何台もカメラが必要であった装置でもカメラの台数を半減することも容易となり、半減することで機器調整の煩雑さや故障の確率も半減できます。また、カメラときたらレンズですが、こちらも高解像度対応やテレセントリックタイプ*3)など、用途により選択できる範囲が格段に広がりました。画像処理の入力系として後残るのは光源です。こちらも高輝度LEDや青色、白色LEDの登場により、自由度の高い光源の設計、高寿命、低価格化が容易となりました(図1)。
【用語説明】
*1)対象物の光学像を電気的信号に変換し、ニ次元の画像として出力する装置
*2)対象物の光学像を横断するある直線上の光信号を電気信号に変化する装置
*3)対象物に対して垂直に照射するレンズ

今回は自動検査の難しさと、画像処理システムの進歩について簡単に述べました。次回(4月号)からは具体的な現場への適応に向けて必要な事柄について紹介します。

目視検査の自動化

第1回 : プロローグ~画像処理技術のすすめ
第2回 : 現場適応上の留意点~いかに活かすか
第3回 : 現場事例にみる実践ソリューション(1)
第4回 : 現場事例にみる実践ソリューション(2)
第5回 : 現場事例にみる実践ソリューション(3)
第6回 : 画像処理技術の進化と新たな可能性

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