第5回 現場事例による実践ソリューション(3)
計装(2004年10月号)
第5回 現場事例による実践ソリューション(3)
今回も前回に引き続いて、当社が実際現場に導入した画像処理システムを例に、直面した課題に対していかに解決したかを紹介します。今回は自動車硝子の製造プラントで稼動する検査システムについてです。硝子製造プラント
自動車硝子の製造プラントは、大きさや形、厚さ、色といったさまざまな種類の硝子製品を製造し出荷しています。プラントの各工程には、必要とされる検査が幾つもあり検査員を配備する必要性がありますが、24時間連続稼動が必要なプラントであり、人件費・人員確保・高速生産・品質安定などのさまざまな問題解決のため自動検査装置が導入されています。
硝子の製造は長い歴史を持つ業種であり、その製造プラントも長い歴史を持ちます。当然「プラントの自動化」は進んでいます。自動検査装置が製造ラインに組み込まれていて、検査する硝子の各品種に対応して品質検査を行っています。
品質検査
検査はキズ・汚れなど基本的な欠点から、マークや孔の位置計測、ペイントの良否判定を行います。(図1)このように硝子の検査と言っても、多種多様な欠点が存在するため、出来る限り欠点にあった光学系装置を準備する必要があります。
システム化の問題点と対策
実際のシステム化に際して障害となった事柄とその対応策についてお話します。これらの問題点は硝子の製造プラントだけではなく、他の製造プラントでも同様な対応が必要と思い紹介します。1)巨大な画像データ
自動車硝子のサイズは大きいもので最大1,800mm×1,000mm程度のものがあります。例えば、この大きいものから0.3mmの欠点を検出する必要があった場合、高解像度のラインセンサカメラ*1)を複数台使用しての撮影になります。すると撮影された結果の画像データは硝子1枚当り約2.2ギガバイトにもなります。このような巨大なデータを通常画像(グレー画像)として扱うと画像処理に時間がかかり過ぎて必要な検査時間に間に合わなくなり、高速・多量生産が実現できません。そこで巨大な画像データに対してランレングス法*2)という画像圧縮技術を施し、この圧縮データのまま画像処理することで製造ラインの速度に間に合うように自動検査を実現しました。
2)不定形な外形
自動車硝子は搭載する車種や、グレードによってさまざまな形がります。特にシステム導入後にどのような形のものが生産され、これを検査しなければならないのかはシステム導入時に誰にも解りません。また検査装置の上流工程には、洗浄工程があり硝子を洗浄します。この工程で軽い汚れやごみを除去するわけですが「水で洗い、風で乾かす」という工程ですので通過した硝子は不規則に動き傾きます。
検査には位置の計測があり、またマーク検査の種類には、角度の計測もありました。従ってこの千差万別の画像から傾きを計測する必要があるのですが、巨大なデータでは「パターンマッチング」などのアルゴリズムでは時間がかかり過ぎてしまうため採用できず、傾き計測のための別のアルゴリズムを考案し作成しました。こういう細かい対応は市販のパッケージ製品を購入しただけでは難しい部分ですので、カスタマイズが出来るか否かがシステムの成否の鍵になります。
3)検査と検出?
当社が導入したシステムに要求されたものは「検査」であり「検出」ではありませんでした。「検査と検出」は画像処理の世界から見るとほとんど同じものと感じますが、製造工程では大きく違うものでした。システムの導入当初の実例ですが、搬送中に「割れた」硝子が検査システムを通過しました。当然「人」が検査を行っていれば「欠品」と判断するのですが、検査システムは「キズ」を判断できても「割れ」を検出するようにはなっていなかったため「正品」と判断してしまいました。一見、笑い話のようですがこの時「検査」とは「欠品を見つける」ことだと認識しました。システム導入前にシステムを使う側と作成する側で十分打合せを行いますが、双方の思い込みみたいなものはお互いに意識して話し合いをしないといけないと痛感しています。
上記の1)、2)などは将来的にはカメラ・半導体などの機器の性能向上で、問題点にならなくなるものだと思いますが、逆に言えば昨今の性能向上をベースに解決できているとも考えられます。また3)に関しては100%無くすのは難しい問題ですが、当然と思われることも逐一確認する気持ちが大切であると思います。
ならではの
自動車硝子の製造プラントでは、「キズ」はその後の工程で硝子の割れる可能性を抱えています。硝子が割れるとその破片は「よごれ」となり、製造ライン(コンベア)を汚し、正常な製品にまで影響を与える可能性があります。「製造工程の知識と経験」は短時間で取得できるものではなく、製造屋の「ならでは」の知識と、画像処理屋の「ならでは」の表現力とを融合させることによって、システムとなりソリューションに繋がっていくのだろうと感じています。
次回はいよいよ最終回となります。シリーズの最後に画像処理技術の進化と新たな可能性についてご紹介します。
用語説明
*1) 対象物の光学像を横断するある直線上の光信号を電気信号に変換する装置
*2) 撮影した画像の白・黒の連続を、定められた符号に置き換え圧縮する手法
目視検査の自動化
・第1回 : プロローグ~画像処理技術のすすめ
・第2回 : 現場適応上の留意点~いかに活かすか
・第3回 : 現場事例にみる実践ソリューション(1)
・第4回 : 現場事例にみる実践ソリューション(2)
・第5回 : 現場事例にみる実践ソリューション(3)
・第6回 : 画像処理技術の進化と新たな可能性
製品情報
・パネル自動検査システム
・マーク自動検査システム
・塗装色むら等欠点自動検査システム
・微小ワーク自動検査システム
・自動選別システム
・広視野対応形状検査システム
・Windows Embedded OS(組込OS)











