PACIFICサイバーセキュリティ研究所

コラム

26年7月号 「つい話してしまった」は誰にでもある:日常会話に潜むソーシャルエンジニアリング

著者:PACIFICサイバーセキュリティ研究所 研究員 H.M
公開日:2026年7月22日(水)
コラムテーマ:心理とセキュリティ

「つい話してしまった」は誰にでもある ― 日常会話に潜むソーシャルエンジニアリング

「今日は在宅勤務なんですね。」

「午後はお客様先へ行く予定です。」

このような何気ない会話を、普段は意識せずに交わしている方も多いでしょう。しかし、こうした日常会話から得られた情報が、サイバー攻撃や情報漏えいのきっかけになることがあります。

ソーシャルエンジニアリングとは

ソーシャルエンジニアリングとは、システムの脆弱性ではなく、人の心理や行動を利用して情報を入手する攻撃手法です。

攻撃者は高度なハッキング技術だけを使うわけではありません。むしろ、人との自然な会話や親切心、油断などを利用して情報を集めるケースが多くあります。

「少しだけなら」が積み重なる

一つひとつの情報は些細なものでも、複数組み合わせることで重要な情報になることがあります。

例えば、次のような会話です。

  • 「今日は部長が出張で不在です。」
  • 「来週サーバーのメンテナンスがあります。」
  • 「新しいシステムは○○社が担当しています。」
  • 「私は経理部なので請求書を扱っています。」

どれも一見すると機密情報ではありません。

しかし攻撃者は、こうした情報を集めることで、次のようなことを判断する材料にしています。

  • 誰を狙えばよいか
  • いつ攻撃すれば気付かれにくいか
  • どの会社になりすませば信用されやすいか

身近にあるソーシャルエンジニアリング

特別な場面だけではなく、日常のさまざまな場所で情報が漏れる可能性があります。

エレベーターで

「今日はシステム障害、大変ですね。」

そう声を掛けられ、状況を詳しく話してしまう。

電話で

「IT部門ですが、○○さんはいらっしゃいますか?」

相手を十分に確認しないまま、在席状況を伝えてしまう。

SNSで

「今日は○○社で打ち合わせ!」

投稿した写真に、社員証やホワイトボード、PC画面が写り込んでしまう。

カフェで

仕事の打ち合わせをしていたら、近くの席に第三者がいた。

会話の内容を聞かれている可能性もあります。

「親切」が狙われる

ソーシャルエンジニアリングでは、人の善意や信頼感が攻撃の入り口として利用されることがあります。

そのため、攻撃者は次のような方法で相手の警戒心を下げようとします。

  • 急いでいるように見せる
  • 困っている様子を演出する
  • 上司や取引先になりすます

「早く対応しなければ」という気持ちが、相手の確認や冷静な判断を省略させてしまうのです。

最後に

情報漏えいは、高度なサイバー攻撃だけで起こるものではありません。

「つい話してしまった。」

「これくらいなら問題ないと思った。」

そんな何気ない一言が、攻撃者にとっては重要な情報になることがあります。

特に、次のような内容は、不用意に話さないよう心掛けましょう。

  • 社員や担当者の在席状況、出張予定
  • システム障害やメンテナンス情報
  • 組織体制や担当部署の詳細
  • 利用しているシステムやベンダー名
  • 業務の進捗や今後の予定
  • 社内でしか知り得ない情報

少しでも「なぜその情報を聞くのだろう」と違和感を覚えたら、その場で答えず、一度立ち止まって考えることが大切です。

情報セキュリティを守るために必要なのは、特別な知識ではありません。

「話す前に一呼吸。」

その小さな心掛けが、大きな情報漏えいを防ぐ第一歩になります。

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