26年10月号 クラウドサービス、その設定は大丈夫? ~SSPMで見つけるセキュリティの落とし穴~
著者:PACIFICサイバーセキュリティ研究所 研究員 R.Y
公開日:2026年10月19日(月)
コラムテーマ:SSPM(SaaSセキュリティ態勢管理)
便利なクラウドサービスに潜むリスク
皆さんは、普段の仕事でどのようなクラウドサービスを利用していますか?
メールやチャット、ファイル共有、Web会議など、今ではさまざまなクラウドサービスが業務に欠かせない存在となっています。
例えば、Microsoft 365やGoogle Workspace、Boxなどは、インターネットにつながれば場所を問わず利用でき、社内外との情報共有も簡単に行えます。
しかし、その便利さの裏には、思わぬセキュリティリスクが潜んでいることをご存じでしょうか。
実は、クラウドサービス自体に問題がなくても、利用する側の設定によって情報漏えいなどの事故につながることがあるのです。
そこで注目されているのが「SSPM」というセキュリティ対策です。
SSPMとは?
SSPM(SaaS Security Posture Management)は、日本語では「SaaSセキュリティ態勢管理」などと呼ばれ、クラウドサービスのセキュリティ設定を継続的に確認・管理する仕組みです。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言えば、「クラウドサービスの設定に危険なところがないか、定期的にチェックしてくれる仕組み」です。
例えば、次のような項目を確認します。
- 多要素認証(MFA)が適切に設定されているか
- 退職者などの不要なアカウントが残っていないか
- 管理者権限が必要以上に付与されていないか
- ファイルが意図せず外部に公開されていないか
- 外部アプリに過剰なアクセス権限を与えていないか
これらを人の手で一つひとつ確認するのは大変ですが、SSPMを利用することで、複数のクラウドサービスの設定状況をまとめて確認し、問題の早期発見につなげることができます。
例えば、こんなことが起きたら?
ある社員が、取引先に資料を送るため、クラウドストレージにファイルを保存したとします。
「メールに添付するより、共有リンクを送った方が便利だな。」
そう考えて共有リンクを作成しましたが、設定は「リンクを知っている人なら誰でも閲覧可能」になっていました。
本来は取引先の担当者だけに見せるつもりだったのに、そのリンクが第三者に渡れば、社外秘の資料を閲覧されてしまう可能性があります。
また、別のケースでは、退職した社員のアカウントが削除されずに残っていたり、普段は使用しないアカウントに管理者権限が付いたままになっていたりすることも考えられます。
こうした問題は、ウイルス感染や不正アクセスとは異なり、普段どおりサービスを利用しているだけでは気付きにくいという特徴があります。
SSPMは、このような設定上の問題を検出し、管理者に知らせることで、事故が起きる前の対策を支援します。
一度設定すれば安心、ではない
「最初にセキュリティ設定を確認しているから大丈夫!」
そう思われる方もいるかもしれません。
しかし、クラウドサービスの設定は、利用者の追加や組織変更、新しい機能の導入などによって日々変化しています。
また、業務上の必要から一時的に設定を緩め、そのまま元に戻し忘れてしまうこともあります。
つまり、導入時に安全だったとしても、ずっと安全な状態が続くとは限らないのです。
SSPMの特徴は、こうした設定の変化を継続的に確認できる点にあります。
ただし、SSPMを導入すればすべての問題が自動的に解決するわけではありません。検出された問題について、業務への影響を考慮しながら、適切に設定を見直すことが大切です。
最後に
クラウドサービスは、今や私たちの仕事に欠かせない便利な存在です。
しかし、どれほど安全性の高いサービスであっても、使い方や設定によっては情報漏えいなどのリスクが生じます。
SSPMは、そうした「設定の落とし穴」を見つけるための有効な手段の一つです。
もちろん、専用のツールを導入することだけが対策ではありません。
普段から、ファイルの共有範囲やアカウントの権限を確認するなど、一人ひとりが設定を意識することも重要です。
「便利だから使う」だけでなく、「安全に使えているか」も確認する。
そんな小さな意識が、クラウドサービスを安全に利用する第一歩になります。