PACIFICサイバーセキュリティ研究所

コラム

25年7月号 うちの子に「セキュリティってなに?」と聞かれて

著者:PACIFICサイバーセキュリティ研究所 所長
公開日:2025年9月24日(水)
コラムテーマ:日常とセキュリティ

「パパのお仕事ってなに?」
ある日の夕食どき、小学2年生のうちの子がふとした拍子にそう聞いてきました。いつもなら「SEっていう仕事だよ」「みんなのパソコンや仕組みを管理する仕事かな」などと答えていたのですが、PACIFICサイバーセキュリティ研究所が設立された直後ということもあり、少し違う言い方をしてみたくなりました。

「パパはね、サイバーセキュリティ研究所の所長なんだよ。セキュリティのお仕事をしてるんだ。」

すると「セキュリティってなに?」と返ってきました。多分あんまり興味がありません。
とっさに私は「みんなが危なくないように、安心して仕事ができるように、いろいろなことをしているんだよ」と答えました。子どもは「ふーん」と言って、それ以上は深く聞いてきませんでした。

でも、後になってふと思ったのです。
「ちゃんと伝わっただろうか?」
子どもにとって“セキュリティ”という言葉は、まだまだ抽象的です。聞きなれないカタカナ語で、「鍵?」「警察?」のようなイメージかもしれません。

改めて、子どもの日常を思い返してみました。親のスマホを使ってお気に入りのYouTuberの動画を観ていたり、リビングのスマートテレビでお気に入りのアニメを再生していたり。今の子どもたちは、生まれた時からインターネットのある世界に生きていて、“つながる”ということを特別視していません。それはもはや水道や電気と同じ、空気のように当たり前にそこにある存在です。

だからこそ、「インターネットは見えないけれど、世界中とつながっている」という基本的なことを、まず伝えなければならないと気づきました。
YouTubeの動画は、スマホの中にあるわけではなく、どこか遠くのサーバーからデータが送られてきている。ゲームも、動画も、会話も、全部「どこかとつながっている」からこそ成り立っている。そして、その“つながり”があるということは、逆に誰かがこちらに入ってこられる可能性もあるということ。
だからこそ、セキュリティが必要なんだよ、と。

例えば、家の鍵を閉めるのと同じように、スマホにもパスコードをかける。知らない人には住所を教えないように、知らないサイトには安易に情報を入力しない。ウイルスは、風邪のように自分から他の人にうつしてしまうこともあるから、予防が大事。そんなふうに、子どもたちの身近な世界に引き寄せて話すことで、きっと伝わりやすくなるはずです。

今度また聞かれたら、こう言おうと思います。
「パパのお仕事はね、インターネットの世界にある“見えないドア”にちゃんとカギをかけて、みんなが安心して使えるようにしているんだよ」

セキュリティは、技術やシステムの話だけではなく、人が安心して暮らしたり、仕事をしたりするための“目に見えない支え”です。子どもの「セキュリティってなに?」という素朴な疑問は、私にとって、自分の仕事の意味と価値を見つめ直す大切なきっかけになりました。

そしてなにより、子どもに安心してデジタルの世界を使ってもらいたい――そのためにも、まずは大人である私たちが、“守る”ということの意味を、しっかり考え続けていきたいと思います。

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