26年1月号 脅威インテリジェンス管理とは!?
著者:PACIFICサイバーセキュリティ研究所 研究員 R.E
公開日:2026年1月30日(金)
コラムテーマ:セキュリティトレンド
ランサムウェアやサプライチェーン攻撃、ゼロデイ脆弱性といった脅威が日常的に報じられるようになり、情報システム部門にはこれまで以上に迅速で的確な判断が求められています。一方で、ベンダーからの注意喚起や公的機関のアラート、海外レポートなど、扱うべき情報量は増える一方で、「どこまで対応すべきか分からない」と感じている担当者も多いのではないでしょうか。
こうした状況の中で注目されているのが「脅威インテリジェンス管理」です。これは単に脅威情報を集めることではなく、情報を判断と行動につなげるための考え方そのものを指します。
脅威インテリジェンスという言葉から、IPアドレスやマルウェアの情報を思い浮かべがちですが、それらはあくまで素材に過ぎません。本質は、「その脅威は自社に関係するのか」「今、対応すべきリスクなのか」を判断するための材料として使えるかどうかにあります。すべての脅威に反応するのではなく、限られたリソースの中で優先順位を付けることが、情報システム部門には求められています。
ここで重要になるのが「管理」という視点です。脅威情報を点として扱うのではなく、過去の判断や対応と結び付けて整理し、次の判断に活かせる状態にしておくことが、脅威インテリジェンス管理の役割です。なぜ対応したのか、なぜ今回は様子見としたのか。その判断を記録し、説明できる状態にしておくことで、属人的な対応から脱却できます。
また、セキュリティの考え方自体も変わりつつあります。これまでの対策は「情報を守り切る」ことが中心でしたが、攻撃が高度化した現在では、「漏れないこと」を前提にするだけでは不十分です。これからは、情報が流出してしまった可能性を前提に、その兆候をいち早く捉え、被害の拡大を防ぐ視点が不可欠になります。
この変化は、セキュリティの役割が「門番」から「探偵」へ広がったと考えると分かりやすいでしょう。門番は侵入を防ぎますが、探偵は外部で起きている出来事を調べ、痕跡から状況を推測します。例えば、ダークウェブ上に自社に関係する情報が出回っていないかを監視し、流出の兆候を手がかりに、どこで何が起きたのかを考える。こうした外部の動きを捉える力が、今後のセキュリティ運用では重要になります。
脅威インテリジェンス管理とは、この「探偵の視点」を組織として持つための仕組みです。外部で観測される脅威や兆候を、自社にとっての意味に置き換え、判断と対応につなげていく。必ずしもすべてに対応する必要はなく、監視に留めるという判断も含めて管理することがポイントです。
脅威インテリジェンス管理は、特別な専門業務ではありません。日々の業務の中で、「この情報は自社に関係するのか」「今の判断にどう影響するのか」と一度立ち止まること。その積み重ねが、現実的で持続可能なセキュリティ運用につながります。 ツール導入の前に、まずはこの考え方を持つことが、これからの情報システム部門にとっての第一歩と言えるでしょう。